外部講師(医療者)を活用したがん教育

出張授業の準備をはじめよう

目 次

1| はじめに

がん教育は、「がん」そのものを教えることが目的ではありません。
子どもたちが自分や周囲の健康について考え、情報を正しく理解し、行動につなげる力——ヘルスリテラシーを育むための“教材”として、がんを扱います。
本サイトでは、主に医療者と教員が協働して、子どもたちの健康観やがん患者への理解を深める授業づくりを支援します。

2| がん教育について(文部科学省より抜粋)

2-1| 目標

  • がんについて正しく理解することができる
  • 健康と命の大切さについて主体的に考えることができる

2-2| 内容

  • がんとは
  • がんの種類とその経過
  • 我が国のがんの状況
  • がんの予防
  • がんの早期発見・がん検診
  • がんの治療法
  • がん治療における緩和ケア
  • がん患者の生活の質
  • がん患者への理解と共生

3| がん教育の手順

授業の日が決まり、外部講師と教員でどのように準備を進めていくか、下記手順を参考にしてください。

process
事前打ち合わせ
外部講師教員
打ち合わせシートに沿って、授業内容や配慮事項などを確認する授業のめあてについて設定し、外部講師に伝える
授業の形式について相談する 授業スタイルあれこれ

授業準備の時間を考慮し、授業日の1ヶ月前に打ち合わせをすると余裕をもって準備ができる。方法はオンラインでも対面でも、両者の都合に合わせて。

process
事前アンケート
外部講師教員
事前アンケートを教員に依頼する場合は
・実施フォーム
・実施時期
・回答の共有方法
など確認しておく
事前アンケートを実施し、回答を外部講師と共有する

事前アンケートを実施することで、事前に児童生徒の理解レベルや質問を確認することができる。授業のねらいによって、知識の獲得に着目したい場合と、認識を確認したい場合とでアンケートを使いわけるとよい。

process
授業準備
外部講師教員
スライドやクイズなど、児童生徒の発達に合わせて準備する すぐに使える!スライド集がん教育の内容を外部講師と教員で分担する場合は、スライドなどを準備する
process
最終確認
外部講師教員
スライドや配布物などの最終資材は事前に教員に確認してもらう外部講師の資材を最終確認し、内容のみならず発達段階にそぐわないと判断される場合は修正を依頼する。その際は修正案を添えるとよい。

最終確認をすることで、発達に合わせた授業の展開が可能になる。また、教員主導の時間がある場合、外部講師のメッセージとの整合性を確認する。

process
当日
外部講師教員
遅くとも授業開始の15分前には現地に到着し、音響や映像の確認をする講師対応、授業実施、授業のフォローなど
process
事後アンケート
外部講師教員
事後アンケートを教員に依頼する場合は
・実施フォーム
・実施時期
・回答の共有方法
など確認しておく
事後アンケートを実施し、回答を外部講師と共有する

事後アンケートは、外部講師および教員には授業の評価として活用でき、児童生徒には知識や認識定着の機会となり得る。

process
フィードバック
外部講師教員
授業に参加した教員からの感想や意見、児童生徒の授業後の様子などを外部講師と共有する

フィードバックは、次年度対策のみならず外部講師や教員のモチベーション向上に欠かせない。事後アンケートを外部講師と共有するタイミングで一連のプロセスについてフィードバックするのも1つ。

4| 授業スタイルあれこれ

がん教育の授業スタイルは、学校や地域、外部講師(医療者やがん経験者)・教員(養護教諭や担任、学年主任など)の関わり方によってさまざまです。例えば、がん経験者は、「生きる」という当事者ならではの視点から、実感や希望を子どもたちに伝えることができるよさがあります。

本サイトでは、外部講師(医師)と教員が協働して授業を実施することで、医学的な正確さと教育的な親しみやすさの両面を活かした、より深い学びの提供を重視しています。生徒が自ら問いを持ち、講師や教員との対話を通じて考えを深め、生活に根ざした学びへとつなげていく——がん教育は、まさにそのような学びの場として機能します。ここでは、実際に行われた4つの授業スタイルをご紹介します。すべて学校医が外部講師をつとめたがん教育の取り組みです。

※紹介する授業スタイルはあくまでも一例です。学校や地域の実態、教員や外部講師の状況に応じて、無理のない範囲で柔軟にご活用ください

4-1| 小学校

  • 外部講師レクチャー+教員主導標語大会

    外部講師ががんの基本的な知識や予防についてレクチャーを行った後、教員が中心となって「がん予防標語大会」を実施します。児童生徒は、外部講師から提供された知識をもとにグループワークを実施することで、他者との対話を通して自己の考えを広げ、自分の言葉で予防の大切さを表現することでより理解を深めることできます。
    学習指導案①
    ワークシート①
  • 外部講師レクチャー+教員のがん体験談+外部講師まとめ

    外部講師による医学的な説明の後、教員が自身や家族のがん体験を語ることで、授業にリアリティと感情的な深みが加わります。児童にとって「がんは身近な問題である」と実感できる構成です。最後に外部講師がまとめを行い、授業全体を振り返ります。
    学習指導案②
    スライド②
  • 外部講師レクチャー+教員の板書+外部講師質問コーナー+教員によるまとめ

    外部講師の話を教員が板書で補足しながら進行し、児童の理解をサポートします。レクチャーの後には質問コーナーを設け、児童の疑問に答える時間を確保。最後は教員が授業のまとめを行い、学びを整理します。
    学習指導案③

4-2| 中学校

  • 外部講師レクチャー+区のがん検診に関する資材配布

    外部講師のレクチャーに加え、区が提供するがん検診に関するパンフレットや資材を配布することで、地域の取り組みとつなげた授業になります。生徒が家庭で話題にしやすく、地域全体で健康意識を高めるきっかけになります。
    学習指導案④

5| 児童生徒が誤解しやすいポイント

がん教育においては、児童生徒の誤解だけでなく、教員や外部講師が無意識に抱きやすい認識のズレも存在します。本コーナーでは、教育現場で生じやすい誤解のポイントを整理し、正確で伝わりやすい授業づくりを支援します。

5-1| がんの要因・予防について

  • がんと生活習慣の関連付けを強調しすぎると、がん患者への偏見を生んでしまうことがあります。「望ましい生活習慣を送ることでがんになるリスクを減らすことができる」「がんになった人がみんな生活習慣が悪かったわけではない」ことを伝え、誤解を与えないよう配慮が必要です。
    質問コーナーQ6
    なお、小児・AYAがんは生活習慣が原因となるものではありません。
  • がんの要因の一つとして感染症があります。がん自体がうつるわけではないことを説明し、がんが風邪のようにうつるという誤解を与えないように配慮します。
    質問コーナーQ7
  • がんの要因の一つとして遺伝があります。がんは遺伝子に傷がついた異常な細胞が無秩序に増殖しますが、それは親から子に遺伝するわけではありません。「遺伝するがんもあるが、ごく一部である」ということを伝え、がん経験者が家族にいる場合に過度に不安を与えないよう配慮します。いわゆる「がん家系」という言葉は遺伝性腫瘍とは異なるケースで使用することがほとんどです。
    質問コーナーQ8

5-2| 早期発見・がん検診について

  • がん検診によって発見された早期がんは治癒する可能性が高いですが、そのようながんは一部であり、がん検診は万能ではありません。がん検診の効果を強調しすぎることでがんになった人はがん検診を受けなかったからという誤解を与えないよう配慮します。
  • 早期がんに関して5年生存率9割であるがんもありますが、いまだにがんは日本人の死因のトップであり、がんの種類によっては早期発見が困難ながんや治癒困難ながんも存在することを丁寧に説明します。
    質問コーナーQ11
    質問コーナーQ13
  • がんは治るものから治らず命に関わるものまで人それぞれで状況は異なります。ネガティブなイメージを払拭すべく「がんは治せる」といった極端な情報提供は誤解を与える可能性がありますので注意が必要です。あくまでも、科学的な説明によって不安を軽減させることががん教育の目的の一つです。
    質問コーナーQ11
    質問コーナーQ13

【出典:がん教育における配慮事項ガイドライン(全国がん患者団体連合会)】

6| 質問コーナー ~授業で出たリアルな声~

子どもは時に、大人の想像を超える鋭い質問を投げかけてきます。「どう答えたらいいのか…」と一瞬戸惑うような問いも、子どもたちが授業を通して真剣に命や健康について考えている証です。
本コーナーでは、実際のがん教育の現場で出た質問と、それに対する回答例を紹介します。現場のリアルな声を通して、授業づくりのヒントや生徒の関心の広がりを感じてください。

6-1| 小学校

がんの発生

Q1 がんってどんな形をしていますか?

授業を聞いて、さらに知りたくなった子どもからの質問ですね。

(例)
「がんは、細胞レベルだったものが、体の中で勝手に分裂して増えていって、かたまりになります。その形は、丸っぽいもの、ゴツゴツしたもの、いろいろあります。できた場所によって違います。」

Q2 がんは何種類ありますか?

分類の仕方によって種類の数はかわってきます。大事なことは分裂するすべての細胞からがん細胞ができる可能性がある、つまり血液も含めて体のあちらこちらにできる可能性があるということを理解してもらうことです。

(例)
「がんは体の中の細胞が異常に増える病気なので、細胞がある場所ならどこでもできます。つまり、たくさんの種類があります。100種類以上あります。細かく分類するともっとたくさんあります。」

Q3 どうして細胞が分裂するときにコピーミスが起こるのですか?

こちらの質問は、授業で分裂をする時にコピーミスを起こす、と説明を受けたうえで、さらに詳しく知りたくなった証ですね。ポイントは、

  • 細胞は自分をコピーする時に(分裂)、設計図を書き写している
  • それはとても細かい作業なのでたまに間違えることがある
  • まちがいがたくさん積み重なるとがん細胞が増えてかたまりになるということです。

(例)
「細胞が分裂するときには、中にあるDNAという設計図をコピーしています。このコピーはとても細かい作業で、量も多いから、時々間違えてしまうのです。みんなが、分厚い本を手書きで写すとたまに字を間違えるのと同じです。間違いを消しゴムで消してくれる係が体の中にいるのですが、間違えが増えると直しきれなくなります」

Q4 がんは一度に2-3個できますか?

通常は1つですが、重複がんの可能性もあり、その確率は10-20%といわれています。

(例)
「がんが一度に2-3個できることも、まれにあります。1つの場所に1つだけできることが多いけれど、同じ場所に違う種類のがんができることも時々あります。また、体の違う場所に別々にできることもあります。」

がんの疫学

Q5 どうして日本ではがんと診断される人が増えているのですか?

日本人のがん粗罹患数(年齢構成を含めた実際の診断数)は、1980年では人口10万人あたり44.85、2020年では78.61と増えているように見えますが、2020年の年齢調整罹患率(1980年の人口構成で2020年を評価する)は1980年と同じです。実はがんのなりやすさはほとんど変わっていないといえます。ポイントは、がんは年齢とともに増える疾患であり、日本は長寿国になってきたということです。Q3の歳をとるとコピーミス細胞が増えるという話とつなげると理解が深まるかもしれません。

がんのリスク

Q6 パパが最近電子タバコに変えたのですが、電子タバコもがんのリスクになりますか?

この質問のように、おうちの人が体に悪いことをしていると受け取ることで、おうちの人が責められていると感じ、子ども自身も傷つくことがあります。しかし、疾患の仕組みを正しく知り、自分やおうちの人を大切に思う気持ちを育てることが大切で、学校健康教育が目指していることのひとつです。

(例)
「とてもいい質問ですね。おうちの人のことを心配している気持ちが伝わってきました。やさしいですね。電子タバコは普通のタバコよりも煙が少ないし、匂いもあまりしないから、体にやさしいのかなと思う人も多くいると思います。おうちの人が電子タバコに変えたのは、体のことを考えてのことかもしれませんね。でも、電子タバコの煙にも同じように体に悪い成分がはいっているということが少しずつわかってきています。まだ長い目でみてわからないこともあるけれど、みんなで健康のことを考えるのは大事だね。また気になることが出てきたら、先生に相談してみたらどうかな。」

最後に「自分が大人になったらどうしたい?」と未来に向けた質問で返すのも一つです。

Q7 なぜ感染症ががんのリスクになるのですか?

リスクに「感染」がでてきますが、ピンとこない子どもは多いと思います。がん自体は感染しないから、がんの人のそばにいても大丈夫ということを繰り返し伝えることも大切です。授業の中で、HPVやピロリ菌、B/C型肝炎ウィルスに触れている場合は、復習をしながら説明するとよいでしょう。触れていない場合は、これらの代表的なウィルスや細菌について挙げると理解しやすいと思います。

(例)
「感染症の中には、体の中で長い間炎症を起こし続けるウィルスや細菌がいます。そうした炎症が長く続くと、細胞の設計図(DNA)に傷がついてコピーミス細胞(がんの元)が生まれやすくなります。でも、ワクチンで感染自体を予防したり、治療薬でウィルスや細菌をやっつけてがんを予防することもできるので安心してください。みなさんは生まれてすぐにB型肝炎のワクチンを打っている人がほとんどですし、小6から高3まではHPVワクチンで子宮頸がんのリスクを下げることができます」

Q8 生まれつきがんになりやすい体質というのはどのような体質ですか?

遺伝性腫瘍の特徴は、家族の中に若い年齢でがんになった人がいる、同じ種類のがんが家族の何人かに起きている、がんになりやすい遺伝子の変化を持っていることがある(検査でわかる)ということですが、この体質があっても必ずがんが発症するわけではないということを伝えるのがよいでしょう児童生徒が誤解しやすいポイント。自分の体を知ることが、未来の健康につながるという前向きなメッセージにすると、児童生徒の安心感と理解が深まります。

(例)
「細胞の設計図が書かれた遺伝子があります。この遺伝子に生まれつき小さな変化があると、がんになりやすい体質になります。がんと診断された人のうちの10人に1人くらいはこのような体質を持っているといわれています。そして、この体質があっても、必ずがんになるわけではありません。がんになりやすいけれど、ならないこともあります。」

Q9 お菓子を食べたらがんにかかりやすくなるのですか?

お菓子を食べ過ぎること自体が直接がんのリスクになるというエビデンスは現時点でありませんが、例えば脂質や糖質のとりすぎによる肥満や糖尿病は、がんのリスクを高めます。

(例)
「お菓子を食べること自体ががんの直接の原因になるわけではないけれど、運動もせずお菓子を毎日食べすぎて、太りすぎたり、将来糖尿病になったりすると、がんにかかりやすくなります。また、食前にお菓子をいっぱい食べてお腹がいっぱいになって、バランスの取れた食事がとれなくなることもまたリスクにつながります。ただし、体の大きさや体質は人それぞれ。誰かを悪くいう話ではありません。これからの自分の体を大切にする方法を一緒に考えましょう。先生もお菓子大好きです。だから、量とタイミングを考えて食べよう。」

Q10 マーガリンに発がん物質が含まれていると聞いたことがありますが本当ですか?

マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は、心臓病やがんの可能性を高めるとWHOなどが報告しています。しかし、日本では摂取割合が低く、また、企業の取り組みでトランス脂肪酸の含有率は低下しているようです。トランス脂肪酸だけでなく、赤肉(ヘム鉄)、ポテトチップス(アクリルアミド)、人工甘味料、赤色3号、青色1号などのタール色素なども発がんの可能性についていわれています。しかし、これらはすべて、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられます。

(例)
「たしかに、マーガリンには体に悪いかもしれない成分がほんの少しだけはいっていることがあります。お菓子やパンにも含まれていることがあります。でも、普通に食べる分には心配はいりません。ほかにもいろいろ発がん性物質といわれるものもあるけれど、毎日大量に口にするのでなければ心配はいりません。」

がんの診断/症状/治療

Q11 がんは早期発見すると治るものもあると言っていましたが、手遅れだと死んでしまうのですか?

このような質問はとても繊細で、命や死についての不安を含んでいます。事実をやさしく伝える必要があるため一瞬回答にためらうこともあります。一方で、このような質問がきたらヘルスリテラシーを育てるチャンスです。命の価値は治るかどうかで決まらない、がんになってもその人の人生や存在の価値は変わらないというメッセージも大切です。

(例)
「がんは早く見つけて治療をすれば治ることもある病気です。でも、発見しにくいがんもあって、見つかるのが遅くなると、もとの健康な時と同じように元気に過ごすことが難しくなったり、命にかかわることもあります。それでも、今は治療が進歩していて、がんが進んでいても長く元気に過ごせるようになってきました。がん検診も大切だけれど、それだけではなくて、がんにかかりにくい生活を心がけることや、がんになった人を支えることもとても大事です。そして、治らなくてもその人らしい時間を大切にして過ごしている人もいるし、亡くなることは「生き切った」ということであり、その人の生き方は消えません。」

Q12 がんになったらどこが痛くなるのですか?

がん=痛みというイメージをもつ児童生徒が多いようです。がんについて正しく知るよいチャンスです。

Q13 なぜ、治らないがんがあるのですか?

この質問はとても本質的で、不安を感じていることもうかがえます。

(例)
「とてもよい質問ですね。がんは治ることもあるし、治すのが難しいこともある病気です。治らないことがあるのは、例えば、がんが体の中で広がってから見つかった時や、種類によって治しにくいがんもあります。また、がんができた体の部位によっては、手術や薬が使いにくいこともあります。あるいは、年をとっていたり他の病気をもっていたりして治療に使える力が落ちていることもあります。」と解説したうえで、「治しにくいがんになった人が安心して暮らせる社会ってどんな社会だと思う?」など問いかけるのも一つです。

がんと暮らし

Q14 がんになったら入院するのですか? / がんになったら外出できますか?

がん=入院というイメージをもつ児童生徒が多いようです。がんについて正しく知るよいチャンスです。

(例)
「がんになっても入院しない人もいます。手術をするときや特別な抗がん剤治療を受ける時、あるいは体調を整えるために休む時などに入院することもあります。でも、入院せずに仕事をしながら病院に通って治療する人もたくさんいます。体調がよければ、買い物に行ったり友達と会ったり、旅行に行く人もいます。」

Q15 がんになっても治療して死なずに済んだら、その後の生活はどうなりますか?

がん=終わりというイメージをもつ児童生徒が多いようです。がんについて正しく知るよいチャンスです。

(例)
「治療をして体調がよくなり、元の生活に戻っている人もたくさんいます。体調を見ながら少しずつ生活を整えていくことが大事です。周りの人がいつも通り接してくれたり、応援してくれたりすると、安心して過ごせるという人も多いです」

Q16 がんの再発を予防するにはどうしたらいいですか?

現時点で最も信頼できる再発予防策は、禁煙、定期的な運動、健康的な食事、体重管理などの生活習慣改善であり、これらは米国がん協会などの主要学会のガイドラインでも推奨されています。

(例)
「がんの治療が終わったあとも、タバコを吸わない、運動や体重管理など心身を大切にすることで、がんがまた出てきにくくすることができます。」

Q17 がんになっても運動はできますか?

運動は、がん患者にとって治療の副作用軽減、予後改善、QOL向上などに寄与する重要な要素と考えられ、最近はがん関連の学会でもテーマとして取り上げられることが増えてきました。

(例)
「がんになっても、体の調子をみながら運動できます。最近では、運動ががんをできにくくしたり、治療による副作用の一部を少なくしたりするという研究も増えてきています。」

その他

Q18  子どもががんになったらどうしたらいいですか? / 小学生はどうやってがんを見つけるのですか?

0歳から14歳までに発症するがんを小児がんといい、年間約2500人が診断されています(希少がん)。白血病が多く、脳腫瘍、神経芽種、リンパ腫などがあります。多くの小児がんは5年生存率と10年生存率の差が小さく、予後が改善されてきています。

(例)
「子どもががんになることはとても少ないけれど、もしそうなっても病院でしっかり治療をして元気になる人がたくさんいます。病気になっても、おうちの人や学校の先生、お友達、そして病院の先生、看護師、保育士、とてもたくさんの人が支えます。」「小学生はがん検診がないですが、体調が悪いことがそのサインになります。何か心配なことがあったら、おうちの人や保健室の先生、担任の先生にいつでも相談してください。」

7| すぐに使える!授業スライド

文部科学省が作成した「がん教育推進のための教材 補助教材」をもとに医師用に一部改変し、30分〜40分の授業を想定して、一例として提示しました。専門領域に関わらず、がんに関する知識・認識を伝えることができるよう、スライドのメモにポイントや台本も記載しています。必要な部分をご活用ください。

8| 現場お役⽴ちQ&A

8-1| 事前準備

1.事前打ち合わせでは何を確認したらよいですか?

出張授業を実施する上で最も大切なのは事前打ち合わせです。事前打ち合わせは、がん教育の窓口になる教員と外部講師で以下について確認していきます。

  • 学校側のニーズ(学習のねらい)
  • 授業内容・授業形式(講義形式、教員が外部講師にインタビューなど)
  • すでに学習している項目や関連する授業(性教育・HPVワクチンなどの健康教育)
  • 配慮事項(下記参照)
  • 日時、授業を行う場所
  • 対象児童生徒の学年、人数・保護者参加の有無
  • PCなど準備品
  • 児童生徒に対する事前事後アンケート調査
  • 当日までの準備(資料やアンケートの期日や送付方法)
  • 保護者への事前周知の有無
  • 当日の集合時間と場所

など

まずは学習のねらいを確認しながら、授業内容を組み立てます。打ち合わせの場でコンテンツの枠組みを決めてしまうのも一つです。

例えば、 

  • がんとは
  • がんの予防
  • がんの治療
  • がん患者への理解と共生

配慮事項について具体的には以下について確認します。

  • 児童生徒の中に最近身近でがんになったりがんで亡くなった方がいるか
    (対応についてはQ2をご参照ください。)
  • 校内あるいは学年に小児がんあるいは小児がんの兄弟をもつ児童生徒がいるか
  • 視聴覚障害、発達障害、外国語対応の児童生徒がいるか
  • 複雑な生活背景(虐待など)をもつ児童生徒がいるか(家族の絆を強調しない配慮)
  • 教職員で当事者がいないか

配慮すべき児童生徒に関しては教員が全てを把握しているわけではありません。事前にどのような児童生徒がいるか把握するために事前アンケートを実施したり、保護者向けに保健だより等で周知して該当者から連絡をもらったりするのも一つの方法です。

取りこぼしのないよう外部講師打ち合わせシートをご活用ください。
また、授業中や授業後に気分不良を訴える子どもがいた場合の対応についても事前に確認しておくとよいです(Q10, Q11参照)。

2.家族にがん当事者(あるいは⾃⾝が当事者)がいる場合の児童⽣徒への配慮が求められていますが、具体的にどのような配慮をしたらよいですか?

まずは、事前打ち合わせでどのような児童生徒がいるか把握することが重要です。もしいればどのような対応が必要かあらかじめ情報共有しておきましょう。
しかし、男女ともに2人に1人が生涯のうちにがんと診断される時代であり、学校が把握していなくても配慮すべき児童⽣徒が⼀定の割合でいるものだという認識をもって準備を進めることが大切です。直近で大きな喪失をしている場合は、授業を延期することも考慮します。

3.授業に参加させたくないと保護者・本⼈が⾔ったらどう対応したらよいでしょうか?

授業に参加するかどうかの決定権は本人や保護者・学校側にありますが、状況に合わせて内容を変更・配慮することを検討します。出張授業により正しい知識を得ることで不安や恐怖、悲観が緩和される可能性があること、辛い気持ちになったらいつでも退席できることを共通認識としてもち、授業中、授業後は教員が注意深く観察し対応してください。

4.出張授業は講演会や講義とどのように違いますか?

講演会や講義は一方的に話すスタイルで、一定の情報を確実に伝えるためには有効かもしれません。しかし、子どもの主体的な思考は育ちにくく、子どもとの相互の関わり合いもありません。外部講師が伝えたい内容で一方的に授業を展開したり、難しい言葉や専門用語を使ったりすることを避け、子どもの理解度を確認しながら授業を進めることが大切です。子どもたちにとって必要な情報は何か、という視点で授業を組み立てます。一定の情報を確実に伝えつつ、部分的に子どもに考えさせたいときには問いかけやクイズを挟み込むような授業が有効なようです。児童生徒は、外部講師だけでなく教員や子ども同士との対話を通じて学びを深めます。

5.⼩学⽣と中学⽣とでは授業内容を変えた⽅がいいですか?

小学生には、生活の中に落とし込めるような内容だと分かりやすく伝わります。例えば、生活習慣ががんの予防につながる可能性があることや、がん患者・経験者の気持ちを考えるという内容であれば実践的であり伝わりやすいかもしれません。中学生には科学的根拠に基づいて理解できるようにすることを意識します。例えば、がんの原因、予防可能ながん(子宮頸がん)、予防できるかもしれないがん(喫煙に関連するがんなど)、早期発見につながるがん(5大がん)、なぜ早期発見が重要かなどを正しく理解できるように伝えることが大事です。学校によって授業の時期も異なりますし、児童生徒の理解度もさまざまです。事前の打ち合わせで、対象となる児童生徒たちの理解度を教員に確認するとよいでしょう。

8-2| 学校現場

6.子どもからの質問に答えられそうにない時どう返答したらよいでしょう?
  • 情報・データを知らなくて答えられない時
    「いい質問ですね。一つ勉強すると次々に疑問が出てきますね。インターネットや図書館で調べてみましょう」「いい質問をありがとう。今詳しいデータを持ち合わせていないので、後日お答えしますね。担任の先生に答えを送りますので待っていてくださいね」など、分からないことは調べるという姿勢をみせるとよいかもしれません。
  • 答えがなくて答えられない時
    例えば、なぜがんになるのか?なぜ死ぬのか?(科学的な問いではなくwhy?の問い)に対しては、「難しい質問ですね、だれかこの質問に答えてみたい人いませんか?」「よい質問ですね、実は自分にも分かりません。ずっと考え続けています。みなさんも考え続けてください」など、質問自体を支持しつつ、答えが一つでないことに対してはみんなで考えるというスタンスを示してもよいかもしれません。
7.体験を語り、助言を求めるような質問にはどう対応したらよいでしょうか?

例えば、祖母ががんで起きるのが辛そうです、自分はどうしたらいいですか?など体験から助言を求めることは、思いやる、共に生きるということを実践している表れであると考えることもできます。質問をいい機会と捉え、「みなさんだったらどうしますか?」と問いかけ、教員に手伝ってもらいながら小グループで考える時間をとって発表してもらうという展開も一手です。

8.授業に集中せず、話を聞いていない子どもがいた場合どのように対応したらよいでしょうか?

友達にちょっかいを出したり、おしゃべりをする子どもにはアイコンタクトなどを使って安心を与えましょう。授業の内容が面白くて思いを話したがっている場合は、いったん質問コーナーにしておしゃべりに対応するのも手です。また、つまらなそうにしていたり居眠りをしている子どもが目立つ場合は、クイズタイムを設けたり、1分ほどみんなでストレッチをするなどブレイクを挟むのも効果的です。マイク無しあるいは無線マイクであれば、生徒の間に入って歩きながら授業をしたり、生徒にマイクを向けて意見を求めてもよいかもしれません(しつこくない程度に…)。このようなことがありそうな生徒を事前打ち合わせで話しておくとよいでしょう。

9.次々に質問が挙がり、授業が進まない場合どのように対応したらよいでしょうか?

質問は基本的に歓迎し、どのような質問であっても「いい質問ですね」「質問してくれてありがとう」などと一旦質問を受け止めましょう。生徒たちは必ずしも今この場で正解を知りたいわけではなく、思ったことを大人に伝えたい、自分が理解できたことを認めてほしい(承認欲求)、などといった場合で手を挙げることもあるかもしれません。収拾がつかないほど手が挙がる場合は、「3つだけ答えますね」「最後の質問にしますね」と一旦切り上げ、事後アンケートがある場合はそこに書いてもらうよう伝えましょう。また、あらかじめ教員と相談し、質疑の進行は教員に任せるのもよいでしょう。

10.授業中に子どもが気分不良を訴えた場合どうしたらいいでしょうか?

授業の冒頭に、気分が悪くなったり辛い気持ちになった時は遠慮なく退室してよいことを伝えた上で開始します。リアルな写真や動画は子どもが怖がることがあるため、配慮しましょう。外部講師は、もし手術中の画像などをスライドに入れる場合は、過激な写真や内容が含まれていないか授業で使用するスライドを事前に学校側に確認してもらいましょう。

授業中にもし表情がフリーズしたり硬直したりしている子どもがいた場合は、個別に教員が声かけをしましょう。外部講師からは、退室してもよいことを改めて全体に伝えてもよいかもしれません。もし身近にいる当事者を想像して辛い気持ちになった場合は「辛かったかな」「聞くのは嫌だったかな」などの感情を言葉にする声かけをし、「辛くなってしまうほどOOのことをとても大切に思っているのですね」など感情を表出できたことをポジティブに捉えることができるような声かけをするとよいでしょう。周りに自分の気持ちを正直に伝えてよいことを伝え、家族の一員としてできることを子どもと一緒に考えると安心するかもしれません。授業後は学校スタッフ(担任や養護教諭、学校医、スクールカウンセラーなど)で引き続きフォローをお願いします。

8-3| 授業後

11.授業後に生徒の気分・体調不良の報告を受けた場合、どのように対応したらよいですか?

学校より後日気分不良の生徒がいるという報告を受けた場合も、症状を確認した上で基本的には学校(担任や養護教諭、学校医、スクールカウンセラーなど)に継続的なフォローをお願いしましょう。

12.授業内容に関して保護者からクレームがきた場合、どのように対応したらよいですか?

外部講師は授業で使用したスライドや発言の意図を学校に説明します。学校は、問題となった場面で児童生徒がどう受け止めたか把握し、問題視される部分を明確にし、保護者に授業の目的や使用した資料、改善策を丁寧に伝えます。対策としては、医療者でない立場の方からみて過激な写真や内容が含まれていないか事前に授業で使用するスライドを学校側に目を通しておいてもらいましょう。

9| 関連サイト

  • ⽂部科学省HP
  • 公益財団法人 日本対がん協会HP
  • がん教育における配慮事項ガイドライン・全国がん患者団体連合会 企画発行

10| e-canコアメンバー(五十音順)

スクロールできます
都立新宿山吹高等学校副校長石井健一
国立がん研究センター予防研究部井上真奈美
日本女子体育大学体育学部健康スポーツ学科助友裕子
がん研有明病院乳腺内科高野利実
国立国際医療センターサバイバーシップ支援科谷山智子
国立国際医療センター国際診療部日野原千速
がん研有明病院 総合腫瘍科三浦裕司
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