目 次
がん教育
「がん教育」≠「がんを教える」
がんを教材とした健康教育
がん教育の目標(文部科学省より抜粋)
- がんについて正しく理解することができる
- 健康と命の大切さについて主体的に考えることができる
補足
がん教育=がんを通して…
について考える機会になる
がん教育の内容
- がんとは
- がんの種類とその経過
- 我が国のがんの状況
- がんの予防
- がんの早期発見・がん検診
- がんの治療法
- がん治療における緩和ケア
- がん患者の生活の質
- がん患者への理解と共生
これらの内容すべてを伝えなくてはならないわけではありません。
学校と相談しながらコンテンツを決めていきます。( Q1参照)
児童・生徒が誤解しやすいポイント
がんの要因・予防について
- がんと生活習慣の関連付けを強調しすぎると、がん患者への偏見を生んでしまうことがあります。「望ましい生活習慣を送ることでがんになるリスクを減らすことができる」「がんになった人がみんな生活習慣が悪かったわけではない」ことを伝え、誤解を与えないよう配慮が必要です。
なお、小児・AYAがんは生活習慣が原因となるものではありません。
- がんの要因の一つとして感染症があります。がん自体がうつるわけではないことを説明し、がんが風邪のようにうつるという誤解を与えないように配慮します。
- がんの要因の一つとして遺伝があります。がんは遺伝子に傷がついた異常な細胞が無秩序に増殖しますが、それは親から子に遺伝するわけではありません。「遺伝するがんもあるが、ごく一部である」ということを伝え、がん経験者が家族にいる場合に過度に不安を与えないよう配慮します。いわゆる「がん家系」という言葉は遺伝性腫瘍とは異なるケースで使用することがほとんどです。
早期発見・がん検診について
- がん検診によって発見された早期がんは治癒する可能性が高いですが、そのようながんは一部であり、がん検診は万能ではありません。がん検診の効果を強調することでがんになった人はがん検診を受けなかったからという誤解を与えないよう配慮します。
- 早期がんに関して5年生存率9割であるがんもありますが、いまだにがんは日本人の死因のトップであり、がんの種類によっては早期発見が困難ながんや治癒困難ながんも存在することを丁寧に説明します。
- がんは治るものから治らず命に関わるものまで人それぞれで状況は異なります。ネガティブなイメージを払拭すべく「がんは治せる」といった極端な情報提供は誤解を与える可能性がありますので注意が必要です。あくまでも、科学的な説明によって不安を軽減させることががん教育の目的の一つです。
外部講師経験者の授業をのぞいてみる
「外部講師経験者の授業をのぞいてみる」は こちらのページからお入りください。(パスワードが必要です)
すぐに使える!スライド集
文部科学省が作成した 「がん教育推進のための教材 補助教材」をもとに医師用に一部改変し、30分〜40分の授業を想定して、一例として提示しました。専門領域に関わらず、がんに関する知識・認識を伝えることができるよう、スライドのメモにポイントや台本も記載しています。必要な部分をご活用ください。
※本スライド集を含むコンテンツの正確性については細心の注意を払っておりますが、ご利用にあたられましてはご自身の責任のもとご活用ください。
現場お役⽴ちQ&A
事前準備
- 1.事前打ち合わせでは何を確認したらよいですか?
-
出張授業を実施する上で最も大切なのは事前打ち合わせです。事前打ち合わせはがん教育の窓口になる教員と以下について確認していきます。
- 学校側のニーズ
- 授業内容・授業形式(講義形式、教員が外部講師にインタビューなど)
- すでに学習している項目や関連する授業(性教育・HPVワクチンなどの健康教育)
- 配慮事項(下記参照)
- 日時、授業を行う場所
- 対象児童・生徒の学年、人数・保護者参加の有無
- PCなど準備品
- 事前アンケート、 事後アンケート調査協力の可否
- 当日までの準備(資料やアンケートの期日や送付方法)
- 保護者への事前周知の有無
- 当日の集合時間と場所
など
まず学校からのニーズを聞き取りながら授業内容を組み立てます。打ち合わせの場でコンテンツの枠組みを決めてしまうのも一つです。
例えば、以下のようなコンテンツも考えられます。
- がんはどんな病気?(疫学・発生)
- がんになりやすくなる生活習慣がある(予防)
- がんは人に伝染しないが感染症と関連!?(予防)
- 早期発見して治すことができるがんもある(検診)
- 自分らしく生きる・暮らす(治療、緩和ケアを含め)
- 大切な人ががんになったら〜私にできること〜(共生)
配慮事項について具体的には以下について確認します。
- 児童・生徒の中に最近身近でがんになったりがんで亡くなった方がいるか
(対応については Q2をご参照ください。)
- 校内あるいは学年に小児がんあるいは小児がんの兄弟をもつ児童生徒がいるか
- 視聴覚障害、発達障害、外国語対応の児童・生徒がいるか
- 複雑な生活背景(虐待など)をもつ児童がいるか(家族の絆を強調しない配慮)
- 教職員で当事者がいないか
配慮すべき児童・生徒に関しては教員が全てを把握しているわけではありません。事前にどのような児童・生徒がいるか把握するために事前アンケートを実施するのも一つです。また、配慮事項に関して教員が把握していない場合もありますので、その場合はこちらから以下のフォーマットを用いてあらかじめ示し合わせておくとスムーズです。
外部講師からのお願い
- 児童・生徒の様子に目と気を配ってください。
- 体調が悪くなったら遠慮なくその場から離してください(待機場所の検討)。
- その後のフォローと情報の共有をお願いします。
取りこぼしのないよう 外部講師打ち合わせシートをご活用ください。
また、授業中や授業後に気分不良を訴える子どもがいた場合の対応についても事前に確認しておくとよいです( Q10, Q11参照)。
- 2.家族にがん当事者(あるいは⾃⾝が当事者)がいる場合の児童・⽣徒への配慮が求められていますが、具体的にどのような配慮をしたらよいですか?
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まずは、学校との事前打ち合わせでどのような児童・⽣徒がいるか把握することが重要です。もしいればどのような対応が必要かあらかじめ教員と話し合います。
しかし、男女ともに2人に1人が生涯のうちにがんと診断される時代であり、学校が把握していなくても配慮すべき児童・⽣徒が⼀定の割合でいるものだという認識をもって準備を進めることが⼤切です。直近で大きな喪失をしている場合は、学校の判断で授業を延期もしくは中止することも考慮します。
- 3.授業に参加させたくないと保護者・本⼈が⾔ったらどう対応したらよいでしょうか?
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授業に参加するかの決定権は本人や保護者・学校側にありますが、状況に合わせて内容を変更・配慮することをまずお伝えします。出張授業により正しい知識を得ることで不安や恐怖、悲観が緩和される可能性があること、辛い気持ちになったらいつでも退席できること、授業中、授業後は教員が注意深く観察し対応することも合わせてお伝えしましょう。その上で、授業の実施や対応については学校が最終的に判断します。
- 4.出張授業は講演会や講義とどのように違いますか?
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講演会や講義は一方的に話すスタイルで、一定の情報を確実に伝えるためには有効かもしれません。しかし、子どもの主体的な思考は育ちにくく、子どもとの相互の関わり合いもありません。外部講師が伝えたい内容で一方的に授業を展開したり、難しい言葉や専門用語を使うことを避け、子どもの理解度を確認しながら授業を進めることが大切です。子どもたちにとって必要な情報は何か、という視点で授業を組み立てます。一定の情報を確実に伝えつつ、部分的に子どもに考えさせたいときには問いかけやクイズを挟み込むような授業が有効なようです。
- 5.⼩学⽣と中学⽣とでは授業内容を変えた⽅がいいですか?
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小学生には、生活の中に落とし込めるような内容だと分かりやすく伝わります。例えば、生活習慣ががんの予防につながる可能性があることや、がん患者・経験者の気持ちを考えるという内容であれば実践的であり伝わりやすいかもしれません。
中学生には科学的根拠に基づいて理解することを意識します。例えば、がんの原因、予防可能ながん(子宮頸がん)、予防できるかもしれないがん(喫煙に関連するがんなど)、早期発見につながるがん(5大がん)、なぜ早期発見が重要かなどを正しく理解できるように伝えることが大事です。学校によって授業の時期も異なりますし、児童・生徒の理解度もさまざまです。事前の打ち合わせで、対象となる児童・生徒たちの理解度を教員に確認するとよいでしょう。
学校現場
- 6.子どもからの質問に答えられそうにない時どう返答したらよいでしょう?
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- 情報・データを知らなくて答えられない時
「いい質問ですね。一つ勉強すると次々に疑問が出てきますね。インターネットや図書館で調べてみましょう」「いい質問をありがとう。今詳しいデータを持ち合わせていないので、後日お答えしますね。担任の先生に答えを送りますので待っていてくださいね」など、分からないことは調べるという姿勢をみせるとよいかもしれません。
- 答えがなくて答えられない時
例えば、なぜがんになるのか?なぜ死ぬのか?(科学的な問いではなくwhy?の問い)に対しては、「難しい質問ですね、だれかこの質問に答えてみたい人いませんか?」「よい質問ですね、実は自分にも分かりません。ずっと考え続けています。みなさんも考え続けてください」など、質問自体を支持しつつ、答えが一つでないことに対してはみんなで考えるというスタンスを示してもよいかもしれません。
- 7.体験を語り、助言を求めるような質問にはどう対応したらよいでしょうか?
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例えば、祖母ががんで起きるのが辛そうです、自分はどうしたらいいですか?など体験から助言を求めることは、思いやる、共に生きるということを実践している表れであると考えることもできます。質問をいい機会と捉え、「みなさんだったらどうしますか?」と問いかけ、教員に手伝ってもらいながら小グループで考える時間をとって発表してもらうという展開も一手です。
- 8.授業に集中せず、話を聞いていない子どもがいた場合どのように対応したらよいでしょうか?
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友達にちょっかいを出したり、おしゃべりをする子どもにはアイコンタクトなどを使って安心を与えましょう。授業の内容が面白くて思いを話したがっている場合は、いったん質問コーナーにしておしゃべりに対応するのも手です。また、つまらなそうにしていたり居眠りをしている子どもが目立つ場合は、クイズタイムを設けたり、1分ほどみんなでストレッチをするなどブレイクを挟むのも効果的です。マイク無しあるいは無線マイクであれば、生徒の間に入って歩きながら授業をしたり、生徒にマイクを向けて意見を求めてもよいかもしれません(しつこくない程度に…)。
- 9.次々に質問が挙がり、授業が進まない場合どのように対応したらよいでしょうか?
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質問は基本的に歓迎し、どのような質問であっても「いい質問ですね」「質問してくれてありがとう」などと一旦質問を受け止めましょう。生徒たちは必ずしも今この場で正解を知りたいわけではなく、思ったことを大人に伝えたい、自分が理解できたことを認めてほしい(承認欲求)、などといった場合で手を挙げることもあるかもしれません。収拾がつかないほど手が挙がる場合は、「3つだけ答えますね」「最後の質問にしますね」と一旦切り上げ、事後アンケートがある場合はそこに書いてもらうよう伝えましょう。
- 10.授業中に子どもが気分不良を訴えた場合どうしたらいいでしょうか?
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授業の冒頭に、気分が悪くなったり辛い気持ちになった時は遠慮なく退室してよいことを伝えた上で開始します。リアルな写真や動画は子どもが怖がることがあるため、配慮しましょう。もし手術中の画像などをスライドに入れる場合は、過激な写真や内容が含まれていないか授業で使用するスライドを事前に学校側に確認してもらいましょう。
授業中にもし表情がフリーズしたり硬直している子どもがいた場合は、個人的に学校スタッフに声かけをしてもらいましょう。講師からは退室してもよいことを改めて全体に伝えてもよいかもしれません。もし授業中に退室した子どもがいた場合は、授業後に会いに行ってよいか学校スタッフに確認した上で症状の確認をします。もし身近にいる当事者を想像して辛い気持ちになった場合は「辛かったかな」「聞くのは嫌だったかな」など感情を表出できたことをポジティブに捉えることができるような声かけをするとよいでしょう。周りに自分の気持ちを正直に伝えてよいことを伝え、家族の一員としてできることを子どもと一緒に考えると安心するかもしれません。授業後は学校スタッフ(担任や養護教諭、校医、スクールカウンセラーなど)に引き続きフォローをお願いします。
授業後
- 11.授業後に生徒の気分・体調不良の報告を受けた場合どのように対応したらよいですか?
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学校より後日気分不良の生徒がいるという報告を受けた場合も、症状を確認した上で基本的には学校(担任や養護、校医、スクールカウンセラーなど)に継続的なフォローをお願いしましょう。
- 12.授業内容に関して保護者からクレームがきた場合、どのように対応したらよいですか?
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授業で使用したスライドや発言の意図を丁寧に説明し、学校側と解決策を一緒に考えます。対策としては、医療者でない立場の方からみて過激な写真や内容が含まれていないか事前に授業で使用するスライドを学校側に目を通しておいてもらうのも一つです。
関連サイト
- がん教育における配慮事項ガイドライン・全国がん患者団体連合会 企画発行
相談窓⼝
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